じんましんは漢字で「蕁麻疹」と表し、皮膚の一部が突然に赤く、くっきりと盛り上がり(膨疹)、しばらくすると跡かたもなく消えてしまう病気です。大抵は痒みを伴いますが、チクチクとした痒みに似た感じや、焼けるような感じを伴うこともあります。個々の皮疹は数十分から数時間以内に消えるのが普通ですが、中には半日から1日くらいまで続くものもあります。症状が激しい場合は次々と新しい皮疹が出没し、常に皮疹が現れているように見えることもあります。膨疹の大きさは1~2mm程度のものから手足全体のものまで様々で、また一つ一つの膨疹が融合して体表のほとんどが覆われてしまうこともあります。形もまた様々で、円形、楕円形、線状、花びら状、地図状などと表現されますが、それらの形に本質的な意義はありません。
大きくアレルギー性と、非アレルギー性のものに分けることができます。アレルギー性にも様々なものがありますが、最も良く知られているのは「I型(即時型)アレルギー」と呼ばれる反応です。マスト細胞の表面には様々な外来物質(抗原、またはアレルゲンと呼ばれるアレルギーの原因物質)と結合するIgE分子が結合しています。IgEがどのアレルゲンと結合するかはIgEごとに決まっていて、マスト細胞の表面にアレルゲンが結合すると活性化され、細胞の中に含まれているヒスタミンなどの化学伝達が放出されて蕁麻疹反応が起こります。非アレルギー性の蕁麻疹では、マスト細胞がこれとは異なる仕組みで活性化されることにより起こります。ある種の抗生物質や痛み止めなどの薬はIgEを介さないでマスト細胞を活性化し得ることが知られています。
毎日のように繰り返し症状が現れる蕁麻疹のうち、発症して6週間以内のもので、細菌、ウイルス感染などが原因となっていることが多いです。
毎日のように繰り返し症状が現れる蕁麻疹のうち、発症して6週間以上経過したもので、原因が特定できないことが多いです。
※急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹を合わせた70%以上は、明らかな原因を特定することのできない、「特発性蕁麻疹」と呼ばれています。
機械的擦過や圧迫、寒冷、温熱、日光、振動などといった物理的刺激により起こります。
入浴や運動などで汗をかくと現れる蕁麻疹で、一つ一つの膨疹(皮膚の膨らみ)の大きさが1~4mm程度と小さく、小児から若い成人に多いです。
食物や薬剤、昆虫などに含まれるアレルゲンに反応して起こるもので、アレルゲンに結合するIgEが関与します。
アスピリンなどの非ステロイド系消炎鎮痛薬、色素、造影剤、食品中のサリチル酸などにより起こる蕁麻疹で、IgEが関与しません。
唇やまぶたなどが突然腫れあがり、2~3日かかって消えます。痒みを伴わず、稀に遺伝性のものもあります。
この他、全身的な病気の部分症状として現れるものや、食物と運動が組合わさった時に現れるものなどもあります。
治療の第1はできるだけ原因・悪化因子を探し、それらを取り除く、または避けるようにすることです。第2は薬による治療です。蕁麻疹のほとんどの場合はマスト細胞から遊離されたヒスタミンが血管および神経に働くことで症状が現れます。そこでこのヒスタミンの作用を抑えるために、抗ヒスタミン薬または抗ヒスタミン作用のある抗アレルギー薬が用いられます。これらの薬は蕁麻疹の種類によらず効果が期待できます。この他、漢方薬や免疫抑制薬が、症状に応じて補助的に用いられることもあります。生活上の注意点としては、蕁麻疹の増悪因子となりやすい疲労やストレスをできるだけ溜めないようにする、魚介類や肉類はできるだけ新鮮なものをとるようにする、防腐剤や色素を含む食品を控えめにするなどがあります。