イボとは「皮膚から盛り上がっている小さなできもの」を表す総称です。
イボは顔・首・手・胸・足の裏・陰部・肛門など全身のあらゆる部位に発生しますが、発生部位や原因によって分類されます。
今のところ、イボ治療に対する特効薬的な治療法は見つかっていないため、治療に少し時間がかかる場合も多いのですが、焦らず根気よく治療することが大切です。
イボ治療なら、当院までお気軽にご相談ください。イボができる原因は、大きく「ウイルス」「加齢や体質(非ウイルス性)」の2つに分けられます。
ウイルス感染が原因となって発生するイボです。皮膚科で診断されるイボの多くは「ウイルス性イボ」です。目に見えないような小さな傷からウイルスが侵入することで、イボが形成されます。原因となる主なウイルスには、2つあります。
ほとんどのウイルス性イボの原因を占めます。HPVと言うと「子宮頸がん」などをイメージされる方がいらっしゃるかもしれませんが、HPVには150以上の型(種類)があり、皮膚にできるイボの原因となる型と子宮頸がんを引き起こす型は異なります。型によって、イボの形状やできやすい場所に違いがあります。
【代表的なイボ】尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)、扁平疣贅(扁平イボ)、尖圭コンジローマ(せんけいこんじろーま)、ボーエン様丘疹症など
感染性の高いウイルスです。
【代表的なイボ】水イボ(伝染性軟属腫)
紫外線・摩擦・加齢などによって形成されるイボです。
紫外線ダメージが蓄積することでイボを形成します。紫外線が原因となるイボは、ダメージを受けやすい頭皮・顔・首によくできます。
【代表的なイボ】脂漏性角化症:しろうせいかくかしょう(老人イボ・老人性疣贅)加齢に伴う皮膚の老化や、洋服の摩擦などによる刺激が原因でイボを形成します。
【代表的なイボ】軟性線維種(なんせいせんいしゅ)・アクロコルドン・スキンタッグなどの首イボイボの代表格である「ウイルス性イボ」の種類と特徴は、次の通りです。
よく見られるイボです。タコ・ウオノメと思い込んで、長年放置することで悪化してしまう方も少なくありません。
【見た目】表面がザラザラ、盛り上がっている(突起)、肌色~白っぽい色
【できやすい場所】手のひら、足の裏
【主なウイルス型】HPV2a/27/57
よくある盛り上がった形のイボではなく、平べったいイボです。
「シミ」と勘違いして、青年扁平疣贅と気づいていないケースも珍しくありません。名前の通り、比較的若い方の発症が多くみられます。
【見た目】平ら、小さい、複数できることもある、茶色っぽい
【できやすい場所】顔(特におでこ)、腕、手のひら、足の裏
【主なウイルス型】HPV3/10/28/29
お子さんの足底によく見られる「痛いイボ」です。見た目がウオノメに似ていますが、発症したのがお子さんで、痛みがあれば、ほぼ「ミルメシア」です。
【見た目】噴火口のように盛り上がりって中心部が凹んでいる、単発(1個)が多い、
【できやすい場所】手のひら、足の裏
【主なウイルス型】HPV1a
性感染症のひとつで、性器・肛門付近にできるイボです。
【見た目】鶏の「トサカ」のように先端がとがったイボや、カリフラワーのように盛り上がったイボが複数できる
【できやすい場所】亀頭、外陰部、肛門周辺
【主なウイルス型】HPV6/11/57
子どもに多く発症する「柔らかいイボ」です。段々と大きくなりますが、1cmを越えることはほとんどありません。ひっかくと潰れて、「とびひ」のように広がる場合があります。通常、手のひら・足の裏にはできません。
【見た目】光沢のある表面、ツヤツヤ、肌色、1~5mm程度の盛り上がったイボ
【できやすい場所】胸・お腹など皮膚の薄いところ、わきの下・腕の内側などこすれやすい部分
【主なウイルス型】ポックスウイルス
正常な皮膚・粘膜の状態であれば、ウイルス感染しにくいと考えられています。
私たちの皮膚は「表皮・真皮・皮下組織」と大きく3つの層から成り立ち、さらに表皮は外側から角質層・顆粒層・有棘層(ゆうきょくそう)・基底層と何層にも重なっています。こうした皮膚の構造と共に免疫の働きによって、皮膚は外部からの刺激や異物の侵入、ウイルス・細菌感染を防いでいるのです。
一方で次のようなケースでは、皮膚へのウイルス侵入や感染が成立しやすくなるので、注意が必要です
●免疫力が低下している
風邪を引いている、口内炎ができているときなど免疫力の低下がみられる場合。
●免疫を抑えるような治療を受けている
免疫抑制剤を使用した治療を受けている場合。
●皮膚のバリア機能が低下している
アトピー性皮膚炎などに罹患しており、皮膚のバリア機能が低下している場合。
(図)皮膚の構造
免疫や皮膚のバリア機能が低下しているときには、次のような場面・条件でウイルスに感染しやすくなります。
●ジム・銭湯・プールの脱衣所
●足ふきマット・スリッパ・タオルなどの共有
●スイミングスクールなどでのビート板・浮き輪の共有
幼児に多くみられる「水イボ」の主な感染経路になります。
ただし、ウイルス性イボの潜伏期間は1か月~6か月と長いので、受診されたときに感染した時期や場所の特定は難しい場合があります。
加齢に伴う皮膚老化や摩擦によってできるイボは、首周りにできる小さなイボで、いわゆる「首イボ」「中年イボ」です。30代頃からでき始め、年齢と共に増えていくケースが多いのですが、体質によっては20代からできる方もいます。また、1~2mm程度の盛り上がりの少ないイボを「アクロコルドン」、盛り上がったイボを「スキンタッグ」、5mm以上の大きなイボを「軟性線維種(なんせいせんいしゅ)」といったように分類する場合もありますが、明確な定義はありません。いずれのイボも痛みのない良性の皮膚疾患なので、がん化はほとんどありません。
【見た目】1~5mm程度の柔らかいイボ、多数発生することがある、肌色~茶色
【できやすい場所】首・わきの下・胸元など皮膚が柔らかいところ
紫外線ダメージの蓄積によってできる代表的なイボは、医学的には「脂漏性角化症」と呼ばれます。主に40代以上の中高年に発症しやすく、特に60歳以上の高齢者になると、ほとんどの方に見られるため、「老人イボ」「老人性疣贅」といった別名もあります。また、同様の要因で発症する「シミ」から発展して「脂漏性角化症」になるケースがあります。脂漏性角化症は良性疾患ですが、日焼けを繰り返すと稀に「皮膚がん」に進展することがあります。
イボを引っ張るとかさぶたのように自分で取れる場合もありますが、傷跡が残る可能性があるため、皮膚科で適切な処置を受けて、除去することをおすすめします。
【見た目】表面はザラザラ、他のイボと比べてやや硬い、盛り上がったイボ、肌色・茶色・褐色(黒みを帯びた茶色)
【できやすい場所】紫外線を浴びやすい顔・頭皮・首・腕など
「ダーモスコープ」という拡大鏡で詳しくイボを確認して、イボの外見から診断を行います(ダーモスコピー検査)。
見た目から判断付かない場合には、イボ(病変)の一部を切り取って、病理組織学的検査を実施することがあります。ダーモスコピー検査や病理組織学的検査で診断が付かなければ、さらに遺伝子検査を行います。遺伝子検査ではHPV型を推定することも可能です。
一般的に、イボの種類や大きさなど患者さんのイボの状態に合わせて、いくつかの治療法を組み合わせて選択します。
ただし、イボは良性疾患であるものの、特効薬のような決定的な治療法がないため、1回の治療で治癒させることは難しく、患者さんごとの治療効果を見ながら進めていきます。
治療に時間がかかる場合もありますが、根気よく続けましょう。
イボ治療の基本となる方法で、お子さんから高齢者まで幅広い年齢層に適応があります。
-196℃の液体窒素をスプレーまたは浸した綿棒でイボに当てます。イボ細胞を凍結させてダメージを与え、破壊します。複数回の治療が必要となり、少し痛みがありますが、耐えられないほどの痛さではないので、お子さんの治療にも用います。また、治療後に水ぶくれ・赤み・黒ずみ・かゆみなどを引き起こすことがありますが、時間経過とともに改善していきます。
【適応となるイボ】ウイルス性イボ・老人性イボ(脂漏性角化症)
【治療間隔】1週間~2週間に1回
※イボの部位・状態によって、回数は増減します。
イボの種類や状態によって、薬を選択します。また、治療間隔には個人差があります。
サリチル酸絆創膏(スピール膏)
サリチル酸には角質を柔らかくする働きがあります。薬剤を含んだテープをイボに貼る処置を毎日続けます。分厚くなった皮膚が次第に白くふやけ、脱落していきます。
ビタミンD3外用薬
皮膚のターンオーバーを促進する働きにより、角化したイボを柔らかくして、取れやすくします。毎日塗りましょう。
抗ウイルス薬配合外用薬
近年、尖圭コンジローマに対してのみ使用できるようになった軟膏タイプのお薬です。抗ウイルス効果でイボを少しずつ小さくしていきます。1日おきに患部に塗って、翌日洗い流します
【適応となるイボ】尖圭コンジローマ
モノクロロ酢酸塗布(自費治療)
モノクロロ酢酸は強い酸で、イボに塗ることでウイルスに感染した細胞を直接破壊します。健康保険の適用外(自費)となりますが、比較的痛みが抑えられるため、お子さんや痛みに弱い方にオススメの治療法です。2週間に1回程度の割合で塗ります。
イボに対する免疫力を高める働きを持つ漢方薬(ヨクイニン:ハトムギ種子抽出物)を用います。即効性があるお薬ではなく、継続した服用が必要となります。
炭酸ガスレーザーで蒸散させて(組織を焼いて消滅させること)、イボを除去します。出血はないので、切除術と比べて、早く傷跡が目立たなくなります。
局所麻酔を行ってから施術するので、処置中の痛みはありません。
【適応となるイボ】ウイルス性イボ・老人性イボ(脂漏性角化症)
【治療間隔】約2週間に1回
※イボの部位・状態によって、回数は増減します。
ピンセットでイボをつまんで除去します。
施術後、患部に数日傷が残る場合がありますが、時間経過とともに次第に目立たなくなります。
【適応となるイボ】水イボ(伝染性軟属腫)
そのほか、イボ周囲の皮膚を切開する「外科的切除」が行われることもあります。
※当院では行っておりません。
●イボを自己流で取ろうとしない
イボを引っ張ると取れそうな感じがしたり、実際にイボの一部が取れたりすることがあるでしょう。しかし、「より症状が悪化する」「イボだと思っていたものが悪性腫瘍だった」というケースもあります。気になるイボができたら、むやみに触らず、早めに皮膚科をご受診ください。
●イボがあるときは、タオル類の共用を避ける
ウイルス性イボは、肌への接触によって人にうつす可能性があるため、タオル類の共有は避けましょう。
●紫外線予防や保湿を行う
通称「首イボ」「老人イボ」では、紫外線や皮膚老化が原因となってイボを形成します。
また、ウイルス性イボでも、皮膚のバリア機能が低下していると、些細な傷から感染するリスクが高まります。日常から日焼け止めを塗ったり、保湿を行ったりしましょう。
ごく軽症であれば、市販薬でも治るケースがあるでしょう。(脂漏性角化症では、効果がある市販薬は認められていません。)
しかし、適切な治療のためには「正しい診断」が大前提となります。イボは命に関わらない良性のよくある皮膚疾患ですが、他の皮膚病や稀に悪性腫瘍の可能性があります。
また、市販薬を用いてご自身で処置することで、皮膚が傷ついて細菌感染したり、色素沈着を起こしたりする場合もあります。
気になるイボができた場合には、お気軽に当院までご相談ください。
よくみられるイボの原因であるウイルスは、健康な皮膚には感染しませんが、小さな傷などから感染してイボを形成すると考えられています。
イボを予防するには、次のような点に注意すると良いでしょう。
●イボのできにくい皮膚環境を作る
手荒れ・髭剃りなど目に見えないくらいの小さな傷からもウイルスは侵入します。
●日頃から「スキンケア」を行う
外傷を受けやすい手足・肘・膝ならびに髭剃りや手洗い後は、十分な保湿を行うなどスキンケアに努めましょう。
●アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患があれば、適切な治療を行う
アトピー性皮膚炎がある方は特に「水イボ」にうつりやすい上、ひどくなる傾向があります。
●免疫低下を防ぐ
栄養バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレス発散など規則正しい生活で、免疫力低下を防ぎましょう。
足にできる「硬いできもの」として、イボ・ウオノメ・タコがあります。
見た目が似ていることから混同されやすい皮膚疾患ですが、原因が大きく2つに分けられ、治療法も異なります。それぞれ次のような特徴を持ちます。
●イボ
足の裏にできるイボを「足底疣贅」と呼びます。皮膚表面が盛り上がり、表面を削ると、点々と出血する点が、ウオノメ・タコとは異なります。特に足底の大きなイボは圧迫によって深くまで入り込んでいるため、治療に時間がかかります。また、子どもには「ウオノメ・タコ」はほぼできません。お子さんの足の裏に痛みのある硬いできものができた場合は、イボの一種「ミルメシア」です。
【原因】ウイルス
【できる場所】全身
【痛み】なし
※盛り上がりが強い場合には痛むことがあります。ミルメシアでは痛みます。
●ウオノメ(魚の目)
歩行・圧迫などによって角質層が厚くなる病気で、激しい痛みを伴います。中心に魚の目のような芯が見える様子から「ウオノメ」と呼ばれますが、医学的には芯のことを「鶏眼(けいがん)」と言います。
【原因】外からの刺激
【できる場所】大人の足の裏・指
【痛み】ある
●タコ
医学的には「胼胝(べんち)」と呼びます。ウオノメ同様、皮膚の一部が慢性的な刺激を受けて、角質層が厚くなる病気です。
刺激を受けた部分全体の皮膚が少し黄色味を帯びて、硬くなって盛り上がってきます。
【原因】外からの刺激
【できる場所】全身(座りダコ・ペンダコ・吸いダコなど)
【痛み】なし
写真の左側にある方が「タコ」、
写真中央にある鶏眼(白っぽい芯)が見える方が「ウオノメ」です。