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一般皮膚科
円形脱毛症

円形脱毛症とは

突然、コインのような円形型の脱毛が起こる病気です。
この円形型の脱毛を脱毛斑と呼びます。
頭や顔の他に身体の様々な部分に起こることもあり、症状により5つのタイプに分類されます。
子供から大人まで、年齢、性別にかかわらず発症します。
アメリカの調査では、1万人当たり20.2人(0.2%)の発症率という報告もあります。
まゆ毛やまつ毛も含めて、毛の生えているところは全て発症する可能性があります。
また、爪の表面に小さな陥凹ができて、イチゴの表面のようになったり、厚く白く変形したりします。


円形脱毛症のタイプ

1.単発型

突然、頭髪に円形または楕円形の脱毛斑が出来る、円形脱毛症の中では最も多くみられるタイプです。脱毛斑は頭髪だけではなく、眉毛や体毛などにも発生する場合があります。
発症年齢は子どもから老人まで幅広く男女ほぼ同率でみられます。

約80%の方が1年以内に治癒すると言われていますが、まれに次の段階である「多発型」に移行する場合があります。

2.多発型

円形脱毛斑が2つ以上発生するタイプです。
適切な治療を行っても、完治まで半年から 2年くらいかかる場合が多いと言われています。さらに脱毛斑が結合し拡大する場合(多発融合型)もあります。

3.蛇行型

脱毛斑の結合が細長く、後頭部から側頭部の生え際にそって蛇のように広がるタイプです。治療期間が複数年に渡る場合があります。

4.全頭型

脱毛斑が頭部全体に広がり、最終的に頭髪が完全に抜け落ちてしまうタイプです。非常に治りにくい例が多く、治療が長期に渡る場合が多いとされています。そのため治療と共に、ウィッグ(かつら)などを使って、円形脱毛症と上手につきあう工夫が必要となってきます。

5.汎発型

さらに症状が進行し、頭髪はもとより、眉毛、まつ毛、体毛など全身全ての毛が抜け落ちてしまうタイプです。
円形脱毛症の中では最も重度なタイプと言われています。 全頭型と同じく、治療が長期に渡る場合が多いため、こちらも同様に、治療の継続とともにウィッグ(かつら)などを活用して、円形脱毛症と上手につきあう工夫が必要となってきます。

原 因

1.自己免疫異常

免疫異常により毛を作り出すもう毛球部が異物と間違えられてリンパ球によって攻撃されてしまう自己免疫反応により、毛根が傷んで脱毛が起こると考えられており、この説が有力です。

橋本病に代表される甲状腺疾患、尋常性白斑、SLE、関節リウマチ、あるいは重症筋無力症などの各種自己免疫疾患と併発する場合があります。特に、甲状腺疾患は約8%、尋常性白斑は約4%の患者が、円形脱毛症を併発していると言われています。

2.遺伝

遺伝的要因もありますが、親子間の遺伝で発症する率は10%程度と言われていて、親子で必ずしも発症するわけではありません。しかし予防するのも難しいと言われています。

3.アトピー素因

円形脱毛症の患者さんにはアトピー素因(気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎)を持っている方が多い傾向があり、半数以上が本人もしくは家族にアトピー素因が認められるなど、深い関連があるとされています。

4.ウイルスなど

風邪やインフルエンザなどのウイルス感染、また梅毒感染などが脱毛の誘因となることがあります。

5.ストレス

円形脱毛症=ストレスというイメージがあるかもしれませんが、直接的な関連はわかっていません。

6.出産後の女性ホルモン値の変化

妊娠から出産後における女性ホルモンの減少も、原因の一つと言われています。妊娠中、体内の女性ホルモン値は通常の100倍以上に増加しています。それが、出産すると一気に通常値に戻ります。女性ホルモンには発毛促進の作用があり、逆に減少すると抜け毛につながることから、毛周期との関係で産後3~4ヶ月後に抜け毛が多くなります。
多くの場合は頭髪全体のボリュームが減る産後脱毛となりますが、このときに、円形脱毛症になることがあります。さらにアトピー素因を持つ場合、それが加速されやすいというデータもあります。

治 療

1.ステロイド局所注射

炎症や免疫機能を抑える効果のあるステロイドを、脱毛斑に注射で注入する治療法です。
症状が改善しない単発型、および多発型の成人患者に対して使われることがあります。高い水準の発毛効果がある反面、ステロイドの副作用を考慮し、子どもに対しては行いません。また、注射時に強い痛みを伴うことと、副作用として注射部位が陥没する場合があることに注意が必要です。

2.ステロイド外用

炎症や免疫機能を抑える効果のあるステロイドの塗り薬です。
一般的な治療法として多くの皮膚科で採用されており、国内で豊富な治療実績があります。
科学的な根拠となる研究報告がいくつも出てきており、有効性が確かめられた治療法の一つです。

3.カルプロニウム塩化物外用

市販の育毛薬にも含まれている成分で、発毛効果が認められています。
発毛効果の検証が不十分とされていますが、国内で膨大な診療実績があります。副作用としては、発汗やかゆみ、かぶれ、炎症等が発生する場合があります。

4.セファランチン

アレルギー反応を抑制する作用や、血流を促進する作用などがある治療薬です。
脱毛斑の縮小の根拠は薄いとされていますが、国内での診療実績も多いため、単発型および多発型の治療において、他の治療と共に併用されます。
副作用として、胃の不快感や食欲不振などが発生することがあります。

5.グリチルリチン、メチオニン、グリシン複合薬

グリチロン®という薬は、炎症やアレルギーを抑える作用があります。

科学的な検証は不十分ではあるものの、国内で多くの診療実績があるため、単発型および多発型の治療で使用されています。主な副作用として、血圧上昇や腹痛などが報告されています。

6.冷却療法

液体窒素を脱毛斑にあて、誤作動を起こした免疫細胞の働きを抑えて、毛髪の再生を図る治療法です。有効性は十分には検証されていませんが、簡便で有害事象も軽微なため、単発型および多発型の併用療法の1つとして行ってもよいとされています。

7.紫外線療法

脱毛斑やその周辺に紫外線を照射します。
回数や頻度は症状により異なりますが、2週間に1回~6回程度、数か月にわたって治療を行います。副作用としては、紫外線を照射するため、肌の炎症からくるヒリヒリやかゆみ、ひどいときには水ぶくれが生じる場合があります。
近年保険適応となった治療法であり、すべての病型に対して行ってもよいとされています。

8.かつら(ウィッグ)

かつらの装着は円形脱毛症の患者さんのQOL(生活の質)を改善させるとの報告があり、行うよう勧められています。海岸ではかつらが医療用具として保険適応となっている国もあります。

9.治療せず経過観察

単発型または少数多発型の患者群を無治療で経過観察した研究によると、7割以上の患者さんは1年以内に脱毛斑が消失したという報告もあり、患者さんに心理的な配慮を行いつつ、治療せずに経過観察することも選択肢の1つです。

10.その他

局所免疫療法(SADBE/CPCP)や重症例ではステロイド内服療法やステロイドパルス療法もありますが、当院では行っていないため、総合病院への紹介となります。

よくある質問 Q&A

Q1:治療期間は?

一般的に単発型は治りやすく、1年以内の治癒率は80%です。一方で多発型以上では、現状維持から悪化しているケースが約60%を占めており、治療に10年以上かかることも稀にあります。

Q2:再発しますか?

再発しやすい病気で、回復しても半年以内に再び脱毛が起きる方も多くいます。再発を繰り返したり、症状が広がったり、治りにくかったりする場合もあります。

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